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④職人不足時代の工事会社のリアル

前回のレポートと今回のテーマ

ConTech総研では、建設業に特化した独自データを活用し、これまで感覚知で議論されてきた「職人不足」をデータで「見える化」することを進めています。
今回は、データに基づいた「職人不足時代の工事会社の対応策」がテーマです。

前回のレポートで、「受注」と「採用」について工事会社が感じている課題を分析しましたが、地域・工種で全く回答結果が異なっていました。

ハウスメーカー、ゼネコンの方、それぞれが「職人不足」とおっしゃいますが、統計を見る限り、「東京の大工」と「沖縄の大工」では職人不足の発生要因とその対策が全く異なっていると考えています。また、電気等の設備系と大工等の住宅系、分野によって、データ上の傾向は異なっています。

これまでは「工務店の住宅販売戦略」のように「売ること」を重視した議論が主流でしたが、これからは「東京の大工職人確保戦略」のように「職人」を軸にした議論、しかもデータに基づいた議論が必要と考えられます。

下請として仕事を請けることの多い工事会社側も、元請の動向、職人不足の動向を踏まえながら、受注や採用について考える必要があります。

↓ 前回のレポート

職人不足時代の工事会社の対応策

では、具体的に工事会社側は現状を踏まえてどのように対処すればよいのでしょうか?

まだ仮説ベースですが、以下3点で考えています。

Ⅰ 元請の分散
Ⅱ 「希少性」を知る
Ⅲ 良い仕事 ⇒ 良い待遇・採用へ

以下、詳細です。

Ⅰ 元請の分散

・主力販売先は3社以上
・1社あたり売上依存度30%まで
・不況時に大手に切られる取引先(限界生産者)を主力販売先にしない

これは中小企業、特に製造業の「生存条件」として、20年以上前から言われてきたことです。
これは一定レベル建設業にも当てはまります。

SUSTINA会員のある基礎の会社は従業員10名以下の会社ですが、東証1部上場のハウスメーカー5社に加え、地場工務店と並行して直取引しています。

一方、地方のある内装会社は地場ハウスメーカー1社に取引を依存しているため、低い人工単価でも請けざるを得ず、元請取引先拡大と二次請けからの脱却のためにSUSTINAを活用しています。

小売、メーカー等の異業種から建設業への参入、東京・大阪等の元請の地方進出も活発化しているため、「職人不足」の時代に、"下請"と呼ばれてきた企業が取引先を拡大・分散するチャンスは広がっています。

Ⅱ 「希少性」を知る

大工、左官、屋根、基礎はよく希少と言われる工種です。

国土交通省 建設工事施工統計調査(2017年版)を見てみましょう。
この統計は日本中の建設業許可業者を可能な限り国が調査したものです。

図2

例えば屋根業者の場合、建設業許可業者全体の1.4%、社数では約2,700社しか存在しません。
日本の市町村数は約1,700ですので、統計上、「屋根の建設業許可を持っている企業」は一つの市町村に1.6社しか存在しない計算になります。(もちろん、許可を持たない企業や、調査で追いきれない小規模企業はこの統計には含まれていませんので参考値です。)
また、他の工種と統計上、まとめられているため、基礎のデータはありませんでした。

先ほどⅠで触れたように、「希少工種」では、規模は小さくとも大手企業と直接取引する会社があり、一定の交渉力を有していることが分かります。

画像2

Ⅲ 良い仕事 ⇒ 良い待遇・採用

良い条件の元請を増やすことが出来、ようやく職人を一人採用できた

実際にSUSTINAに寄せられた声です。
これまでのレポートの通り、足場、電気等の工種の企業は「受注より採用の方が難しい」と感じています。

採用が困難な時代に、単価や支払条件の悪い元請1社に依存していればどうなるでしょうか?人材に投資する原資が無くなってしまいます。 
「各社が採用に困っている」ことは裏返せば「採用できればそれだけで差別化になる」ということです。

前回のレポートの通り、地方では「受注はあるが採用に苦労している企業」「採用以前に受注に苦労している企業」の二極化が進んでいます。中小企業白書でも類似の内容があり、特に「ITの活用有無」が利益と相関し、二極化につながっているという報告もあります。

この二極化は今後、以下のように広がっていくものと考えられます。

受注好調な企業が元請との交渉力を増し、有利な条件を引き出す
 ↓
増えた収益を人材投資やIT投資に回す
 ↓
対応力、集客力が増し、ますます元請への交渉力が強くなる
 ↓
受注・採用双方で二極化が広がる

口では「いやあ、うちの会社儲かってまへんわー」と言いつつ、立派な時計をしている建設会社の社長さんは身近にいらっしゃいませんか?
もしかしたら既に二極化は進んでいるのかもしれません。

次回のレポート

今回は職人不足の時代に工事会社側はどう対応するか?でした。
次回は「職人不足時代の元請の工事会社探し」「データベースに基づく工事会社探し」についてレポートします。

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↓ 連載記事はこちら

①元請と職人たちのホンネ
https://contech.sustina.me/n/nd66a5a27ae6a
②職人の課題 ~ ダントツ一位は採用
https://contech.sustina.me/n/n625f8dc2e25c
③受注 × 採用 ~ 地域・工種別に個別対策が必要
https://contech.sustina.me/n/n2ba63558b887
④職人不足時代の工事会社のリアル
https://contech.sustina.me/n/nf357b1baaf9d
⑤職人不足時代の元請の工事会社探し
https://contech.sustina.me/n/n7c0eeca48402
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