新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

臨時号⑥ コロナ禍でも絶対に止まらない「必要不可欠」な工事とは?諸外国の定義から見えた3つの傾向(4/21時点)

国内ではじめて新型コロナウイルス感染症の死亡者が発生した2/27から4/20までの54日間で、死亡者数は223人でしたが、4/21には21人増え、244人となりました。(4/21 12:00現在)

いまは欧米諸国に比べて感染者数・死亡者数ともに多くありません。しかし、今後いつ感染爆発が発生してもおかしくない状況にあることは変わりません。

日本ではいまのところ、法的拘束力を伴う全国封鎖(ロックダウン)は不可能とされています。しかし、今後の感染者数・死亡者数の推移によっては、「必要不可欠」な経済活動以外はほとんど休業要請される可能性があります。

そんな中、建設業界では、大手が先陣を切って工事中止を発表しています。清水建設を皮切りに、大和ハウス工業大林組鹿島らが、緊急事態宣言の期限である5/6まで全国の工事現場を原則閉所とすることを発表しました(清水建設のみ13都道府県が対象。大和ハウス工業のみ5/10まで中止)。

一方で、この動きが大手から中堅・小規模へ、また都心から地方まで、波及するかどうかはまだわかりません。

今後、建設業界がどのような経過を辿るのかは未知数ですが、もし国や自治体から、いま以上に経済活動が制限された場合、建設業は「必要不可欠」な経済活動として定義されるのでしょうか。

州ごとに「必要不可欠」の基準が割れたアメリカ

感染者数・死亡者数ともに日本のはるか上を行くアメリカでは、既に「essential=必要不可欠」な産業と「non essential=必要不可欠ではない」産業の区分について、各州がその区分を表明しています。(4/1時点で35の州が表明済み)

おしなべて「必要不可欠」とされているのは、スーパーマーケット、医療・介護施設、銀行、郵便局などです。一方、劇場やジム、美術館、ショッピングモールなどの娯楽施設は、多くの州から「必要不可欠ではない」と判断されました。

加えて、州によって「必要不可欠」かそうでないかの判断が分かれた産業もあります。レストラン、酒屋、労働組合などです。そしてその中に、建設業も入っています

分かれる

国別にみても、ドイツ政府が「建設業は国内経済の重要な柱であり、維持されなければならない」とされ、制限対象から免除としているのに対し、スペインやイタリアでは原則として停止されている(その後一部が再開)など、各国に違いがあります。

建設業の中でも「必要不可欠」な工事と「必要不可欠でない」工事が定義されている

ただし、建設業が「必要不可欠ではない」とされ、停止されている国や地域においても、すべての工事現場が止まっているわけではありません。以下では、「必要不可欠」な工事と「必要不可欠ではない」工事がどこで区切られているのか、その境目を探ります。

「必要不可欠」な工事の定義①米・サンフランシスコ

サンフランシスコは8種類の必要不可欠な工事を発表しています(最終更新は4/14)。

1. 基幹インフラの維持・運用・修繕に向けて急を要する工事
2. 医療施設の新設または拡大に関連する工事(新型コロナウイルス感染症の対応に直接関連していることが条件)
3. 低所得者層向けの住宅(追加条件あり)
4. 市が必要不可欠な政府機能として指定した公共工事
5. 避難所・仮設住宅(ホテルやモーテルは含まない)
6. ホームレスや高齢者などに対する非営利事業を実施する建築物の工事
7. 閉鎖しなければならない建設現場を安全かつ確実に残すために必要な工事
8. 住宅や建築物が安全で、衛生的で、居住可能な状態にあることを確保するために必要な工事(合理的な遅延が不可能なもののみ)

(出典は以下)

「必要不可欠」な工事の定義②米・ボストン

ボストンは3/16に、市内の工事を一時停止することを発表し、同時に「必要不可欠」な工事の例を発表しました(3/24に更新)。

1. ガス漏れ・水漏れ・陥没穴など、公共施設・道路・建物の緊急修繕工事
2. 使用中の建物に新たな電力・ガス・水道・通信を設置する工事
3. 特別に指定された建物や公共施設の工事
4. 保健所・医療施設・シェルター(一時隔離施設を含む)、その他脆弱な人々を支援する施設の工事
5. 交通網の安全性を確保するための工事
6. 小規模住宅の工事(キッチンやバスルームのリフォームなど)
7. 住宅を居住可能な状態にするために必要な工事

(出典は以下)

「必要不可欠」な工事の例③米・ロサンゼルス

ロサンゼルスは、住居を離れて実施できるインフラ事業・建設業関連の仕事の例として、以下を挙げています。サンフランシスコやボストンよりも広範囲です。

1. 商業施設・公共施設・住宅の建設
2. 空港の運営および建設
3. 港湾の運営および建設
4. 上下水道、ガス、電気、石油の採掘および精製
5. 道路、高速道路、公共交通機関、鉄道
6. 固形廃棄物の収集と除去、リサイクル
7. 洪水管理および流域保護
8. インターネットおよび電気通信システム、電話の小売販売およびサービス
9. 上記業種のサプライチェーンに不可欠と判断される製造・流通業

(出典は以下)

「必要不可欠」な工事の定義④米・ニューヨーク

ニューヨーク州においては、以下のいずれかを満たす場合に工事の続行が認められています(4/19に更新)。

1. 道路・橋・交通機関・公共施設・病院・医療施設・ホームレスのシェルター・学校を対象とした工事
2. 低所得者層向け住宅の工事および住宅局が実施している工事
3. 家屋居住者・施設利用者の健康と安全を守るために必要な工事
4. 「必要不可欠」でない工事を安全に中断するための工事
5. エネルギー産業の事業内の工事
6. 「必要不可欠」な事業内の工事
7. 一人の職人によって完結する工事

(出典は以下)

「必要不可欠」な工事の定義⑤ニュージーランド

ニュージーランドは職種ごとに、「必要不可欠」な工事と「必要不可欠でない」工事の例を極めて具体的にまとめています(4/15に更新)。

画像1

(出典は以下)

「必要不可欠」な工事の定義⑥カナダ・オンタリオ州

カナダのオンタリオ州は、「必要不可欠」な工事を以下のように定めています。

1. ヘルスケア関連分野の工事(施設の新設・拡張・改装)
2. 重要なインフラ(交通機関・エネルギー施設・司法関連施設)のメンテナンスおよび増設
3. 石油化学プラント・製油所の維持管理
4. マスクや手袋、医療機器(人工呼吸器)など、新型コロナウイルス感染症の対策に関連する生産を行う産業施設の建設・維持管理
5. 食品・飲料・農産物の生産・加工・製造・流通のための施設(2020年10月4日までに完成予定のものに限る)
6. 一戸建てやマンションの建築(許可証が発行されているものに限る)
7. 住宅の改修工事(2020年4月4日以前に着工したものに限る)
8. 「必要不可欠」でない現場を閉所するために必要な工事

(出典は以下)

見えてきた3つの傾向

以上6地域の規制をまとめると、3つの傾向が浮かび上がります。

まず、設備インフラの維持修繕工事はの多くが継続すること。民間・公共、目的物の別を問わず、施工しない方がリスクが高い維持修繕工事は、たとえロックダウン下にあっても止めることはできないでしょう。

次に、他の「必要不可欠」な産業に付随する工事も継続すること。特に顕著なのは医療介護業ですが、ニューヨーク州などは広く「必要不可欠」な産業のための建設工事を認めています。

最後に、「必要不可欠」ではない現場を安全に閉所するための工事が発生するということです。特に建築工事の場合、土工事の最中に閉所してしまうと、近隣居住者の二次災害に繋がるリスクが想定されます。自然災害の多い日本において、この視点は特に欠かせないポイントであると考えられます。

必要不可欠

日本の建設業がどのような経過をたどるのかはまだわかりませんが、海外の先行事例を参考に、様々なシナリオを考えておく必要があります。

この記事を書いた人:田久保 彰太(ConTech総研)

このnote記事に関連して取材を受けた日経クロステック記事 ↓

臨時号:新型コロナウイルス感染症と建設業 過去記事

建設業特化・新型コロナウイルス関連支援策(4/20時点)

新型コロナが変える建設業の働き方 ~対面と紙とテレワーク(4/14時点)

コロナ禍で日本の建設業が止まる可能性は?欧米各国の動向を基に考察する(4/12時点)

ConTech総研のTwitter 


ありがとうございます!
14
ConTech総研は、「Construct the Connection」をテーマに、民間建築業界のいまとこれからを研究・発信してまいります。

こちらでもピックアップされています

臨時:新型コロナウイルス感染症と建設業
臨時:新型コロナウイルス感染症と建設業
  • 12本

新型コロナウイルス感染症の流行が建設業に与える影響と、中小企業支援策等をまとめます

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。