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臨時号② 新型コロナが変える建設業の今後:直近動向と"コロナ後"の考察(4/2時点)

臨時号第二弾は、直近の動向に加え、リーマン・ショック時の動きを踏まえた"コロナ後"の建設業に向けた考察です。
建設業界への影響、政府の支援策、職人不足指数についてまとめています。

また、暗いニュースが続く中、ある建設業の経営者の方の
「今、コロナで建設業が試されている」
という言葉をヒントに、"コロナ後"の建設業界の今後、少し未来に向けた考察も加えました。
※4月初旬に掲載した記事ですが、6月以降のアクセス数増加に伴い、6/17に加筆、7/30に再度加筆しました

コロナ禍の建設業への影響

短期:工事停止 ~ 現場での感染防止対策
建材・住設の入荷遅れ(3月)

職人の感染防止のための工事停止(4~5月)

感染防止策を講じたうえでの工事再開(5月以降)
現場、事務所等での感染防止策の徹底

総研では海外事例も踏まえた感染防止策について発信しています ⇓

顧客、従業員の感染防止のためのテレワーク導入について ⇓

中長期:景気悪化に伴う需要減と借入増
2020年度の新設住宅着工戸数は前年比マイナス17%の73万戸見込み 野村総研調べ

①売上は1~3割減る恐れがある(リーマン・ショック時の影響から試算)
②コロナで借入をした場合、返済分の売上確保・コスト減が必要
ことを踏まえると、
「不況の中で前期以上の売上を確保しなくてはならない」
「ITも活用し、これまで以上の差別化が求められる」
ことが多くの企業で生じると考えられます。

関連記事です ⇓

建設業向け支援策

政府は今回、リーマン・ショック時の内容を上回る支援策を、当時より速く打ち出しています。問題は、その情報が必要な人に届くかどうかだと考え、総研では3月時点から支援策やその後の売上計画策定に関する情報を専門家や業界紙と連携し、発信しています。
全国の経営・金融系のコンサルタントに話を聞く限り、
「情報感度の高い、動きの速い経営者から支援を受けている」
「コロナをきっかけに中小企業間格差が広がっている」
のが現状のようです。

「職人不足指数」の動き

総研では、これまで感覚で議論されてきた「職人不足」を少しでも数値化できないかと考え、オンラインプラットフォーム(CraftBank)のデータ推移から「職人不足指数」を計算、発信しています。「ウェブ上の案件掲載数÷発注者数」を指数化したものを「職人不足指数」と定義しました。「発注者が職人探しにどのくらい困っているか」を客観的に示した数値です。

データの推移を見ると
・例年3月は他の月の2~3倍、職人不足になる傾向がある。
・一方、今年3月は、直近半年の中で最も職人が不足していない
⇒ ウェブ上の案件の動きに限ったデータを見る限り、平時では考えられないことが起きていることが分かります

"コロナ後の建設業"を考える

「リーマン・ショック、あるいはそれ以上の経済インパクト」

連日、新聞等で上記のような暗いニュースが飛び交っていますが、
「この変化にどう自分たちは対処していくのか」
の議論は不足しているように思います。

総研では、少し早いかもしれませんが、「コロナ後の世界に建設業はどう対処するか」をリーマン・ショック時の影響を参考に「会社と職人」の2つの視点で考察しました。

【リーマン・ショック時の建設業のインパクト】
①会社

2008年のリーマン・ショック時も、政府は直ちに支援策を打ち出しましたが、建設業の倒産・廃業数合計は前年比15%増の1.2万社(東京商工リサーチ調べ)でした。
倒産・廃業数全体の数字を押し上げたのは実は倒産ではなく、廃業の方でした。
政府の支援策を使わずに、高齢の経営者の会社を中心に廃業してしまったことが大きいと考えられます。(高齢の経営者にとって10~15年の長期借入が負担)

図5

出所:東京商工リサーチ 倒産動向、休廃業・解散企業 動向調査

②職人

リーマン・ショック後、減少した建設業従事者は、約50万人
(2008~2010年度の3年間、総務省労働力調査における技能労働者等の数)
50万人といえば、最大手のゼネコン50社分の人数が、3年で引退、もしくは他業界に流出したことになります。

その後、東日本大震災の復興需要や新設住宅着工の回復等の要因で建設投資は伸びましたが、建設許可業者、建設業に従事する人はほとんど増加しませんでした。
この、「リーマン・ショックで減った会社と職人が景気回復後も戻らなかった」ことが現在の「職人不足」(会社と職人の不足)に繋がっています。

図2

出所:国交省 建設施工統計調査、総務省 労働力調査

【今回の新型肺炎の影響を考える】
①会社

リーマンショック時よりも経営者の平均年齢は上がっており(2019年建設業経営者平均年齢59歳/帝国データバンク調べ)、より高齢経営者の廃業リスクは高まっています。

一方で、黒字倒産リスクの原因とされてきた手形取引は2008年から2018年にかけての10年間で流通量が半分以下になっています。(全産業、東京商工リサーチ調べ)
また、建設業の内部留保は中小中堅企業を含めても、2008年以降増加し続けています。(財務省 法人企業統計調査)
CraftBank会員の中でも、小規模であっても一社取引に依存しない、取引分野を分散している(例えば、内装工事なら医療、店舗、オフィスに分散)工事会社は多いです。

ある建設業の経営者は「リーマン・ショック後の建設業の努力が、今、コロナで試されている」と話していたそうです。

リーマン・ショック時も新築住宅の減少幅に比して、リフォームや電気・空調等の設備工事の減少幅は小さい(不景気でも壊れたものは設備を中心に修繕するので)など、同じ建設業でも影響の出方には分野ごとに差がありました。

今回の新型肺炎についても、企業別(特に手形減少、財務体力、取引先の分散)、主要分野別(新築、修繕等)に影響の出方に大きく差が出るものと考えられ、冷静に自社の影響を見極める必要があります。
むしろ、冷静に検証すると同エリアの競合のシェアを奪うチャンスが隠れているかもしれません。

②職人
先ほどの、「今、コロナで建設業が試されている」ではありませんが、
新型肺炎で廃業増 ⇒ リーマン・ショック同様に雇用減 
では、人手不足に悩んできた建設業界としてはイマイチです。

今回、新型肺炎の影響が建設業より深刻なのは、観光、飲食、介護、特にアルバイトなどの非正規雇用の方々です。経済センサスによれば、宿泊、飲食業従事者は500万人を越え、建設業に匹敵する人数が働いています。

意外と知られていませんが、建設業の「正社員のみの会社」の比率は44%と、全産業トップです。
よく比較される製造業は23%、宿泊、飲食業はたった3%です。

図3

出所:厚労省 就業形態の多様化に関する総合実態調査 H26年

また、従業員数30名以上の法人で見ると、給与水準も観光、飲食、運送、福祉等の他産業と比較すると、決して見劣りするものでありません。

図4

出所:厚労省 毎月勤労統計調査 2017年度

若手が入ってこない、55歳以上の社員の割合が高い等の課題が指摘されることも多い建設業ですが、これまで、「正社員になれる機会がある」「給与水準も悪くない」という魅力の発信が不十分だったとも言えます。
また、災害が多発する中、復興に携わる建設業者、職人の社会的意義についても再度注目されるようになりました。

若手人材に対する情報発信ではIT、SNSの活用が不可欠です。
しかし、IT系の業界団体が行った経営者アンケートで
「ITは経営戦略上重要である」と回答する比率が、建設業は全業種の中で最低でした。
リモートワークが前提になる社会において、IT化の遅れは採用戦略に大きく影響します。(FAXやハンコ文化の会社で働きたくないという声も挙がり始めています)

他産業に人材流出してしまうのを「不景気だから、建設業だから仕方ない」と見るのではなく、ITも活用して他業界から受け入れる戦略が、今、建設業各社に求められているのではないでしょうか。

コロナをきっかけに建設業が良い意味で変わった!と言えるよう、総研は予測だけでなく、建設業の未来に向けた提言も行っていきます。

総研では皆さんのご意見をお待ちしております。

この記事を書いた人:髙木 健次(ConTech総研)

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