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臨時号③ コロナ禍で日本の建設業が止まる可能性は?欧米各国の動向を基に考察する(4/12時点)

2020年4月7日、新型コロナウイルス感染症の急速な拡大を踏まえ、政府は7都府県を対象に、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令しました。

緊急事態宣言を受け、4月10日、小池東京都知事は記者会見を開き、一部施設の休業要請を発表。カラオケやバーなどの遊興施設、大学・学習塾、劇場・映画館、体育館など6業種が、休業を要請されました。

一方、病院・薬局、スーパーマーケット・コンビニ、ホテル・旅館、銀行などは「社会生活を維持する上で必要な施設」とされ、適切な感染防止対策の協力要請にとどまっています。

そして、建設現場を含む(と思われる)「作業場」も、この「社会生活を維持する上で必要な施設」として位置づけられています。

建設現場は、多くの現場監督や職人、関係者が出入りし、感染のリスクは低いとはいえません。しかし、工期中の現場の多くは現時点で稼働を続けています。

今後、日本の建設業は今のまま稼働を続けるのでしょうか。もしくは、すべての建設現場が止まる日が来るのでしょうか。欧米各国の動向を基に、考えていきたいと思います。

各国の感染者数・死亡者数は下記をご参照ください。

各国政府のロックダウン等の対応は下記をご参照ください。

イタリアの建設業の動向

世界中で、イランに次いで2番目に全国封鎖(ロックダウン)が発表されたイタリアから見ていきます。

3月10日から発令されたロックダウンに伴い、コンテ首相は、「必要不可欠」なもの以外の企業活動を4月3日まで制限すると発表。建設業も「必要不可欠」な工事以外は活動制限の対象に入りました。その後、感染者数・死亡者数ともに増え続けたため、ロックダウンならびに企業の活動制限期間は4月13日まで延期されました。

全土のロックダウンは5月3日まで再延期されることになりましたが、この数日の死亡者数の減少に伴い、4月14日からは一部の業務が再開することが発表されました。書店やベビー用品店に加え、3月時点で「必要不可欠」ではないとされた電気工事・配管工事などの再開も認められています。

(主な出典は下記)

スペインの建設業の動向

4月12日時点でアメリカに次いで2番目に感染者数が多く、世界でも最初期からロックダウンされたスペインも、イタリアと似た動きを辿っています。

スペインでも、3月末から「必須でない」経済活動が禁止され、建設業もその対象に入っていました。しかし、日別の死亡者数が減少し始めたことを受け、ロックダウン緩和の一環として、4/13から工事現場が再開する見込みです。

(主な出典は下記)

イギリスの建設業の動向

イギリスは、ロックダウンが開始したのは3月23日と、イタリアやスペインよりは遅かったものの、死亡者数は9千人と、世界で5番目に多い国です。

政府による建設業の閉鎖措置は取られていないものの、3月31日の時点で、国内の建設現場の26%が封鎖。完工高ベースでは65%を占めており、主要な現場は早期に自主封鎖されたことが分かります。

また、4月8日時点で、既に建設が決まっている新築住宅のうち79%にあたる193,000戸が工事を停止していることが判明しています。

法的拘束力を持った経済活動の規制がない中のロックダウンは、主要な建設会社に緊急の対応を迫りました。ロックダウン翌日の3月24日からすべての工事現場をストップする会社もあれば、3日程度は稼働を続けている会社もあったようです。

なお、3月24日にいち早く現場を閉鎖したmace社は、4月7日から20の現場を、400人という少数の従業員で再開することを発表しています。

(主な出典は下記)

スコットランドの建設業の動向

スコットランドでは、スタージョン首相が3月22日に、すべての「重要でない」工事現場を閉鎖すべきとの意向を明らかにし、4月6日から無期限で実行されました。3週間後の4月27日までに、追って方針が提示されることになっています。

例外となるのは病院、道路、鉄道などの建設です。ストラスクライド大学内の研究所は、現場が3か月停止した場合、年間の完工高は40~50%減少すると予測しています。

スコットランド政府が発行しているガイドラインは以下です。

(主な出典は下記)

ドイツの建設業の動向

ドイツは、感染者数は10万人を超え世界でも上位に位置しているものの、死亡者数は3千人弱で推移しています。

政府は、3月25日に経済活動の一部を制限しましたが、建設業は「国内経済の重要な柱であり、維持されなければならない」とされ、制限対象から免除されています。

また建設業は、ウイルスの流行が終了したあとの経済回復の原動力になることも期待されており、継続する必要性が強調されています。2020年の完工高も、現時点では、昨年比2.2%減にとどまると予測されています。

アメリカの建設業の動向①サンフランシスコ

アメリカでは州ごとに異なる対応がされています。主要都市の動向を見ていきます。

カリフォルニア州のサンフランシスコは、3月31日から5月3日まで市全体の建設工事を停止することを発表しました。例外は、空港・公共施設・公共交通機関などの「必要不可欠なインフラ」と判断された案件、医療施設、低所得者層向け住宅、ホームレス・高齢者・障害者向けの非営利施設です。

(主な出典は下記)

アメリカの建設業の動向②ボストン

ボストンでは、3月17日から2週間、コロナ感染拡大を防止するための緊急施設を除くすべての建設現場が閉鎖されることが発表されましたが、3月25日には停止期間が無期限になることが発表されました。

3月25日には、マサチューセッツ州知事が「州内全体の建設工事は継続されるべきである」との旨を表明したことを踏まえると、必ずしも州内で一枚岩の対応ができているわけではない様子が窺えます。

(主な出典は下記)

アメリカの建設業の動向③ニューヨーク

ニューヨーク州は単体で感染者数18万人超と、世界のどの国よりも多く、死亡者数も8千人に上っています。

当初、建設業は継続が認められていましたが、3月27日から少なくとも4月末まで、ほとんどの建設現場で工事を停止するように改定されました。継続を認められていない現場の稼働が確認された場合、1万ドル以下の罰金が処せられます。

例外的に「必要不可欠な工事」として継続を認められているのは、病院、ホームレスの一時宿泊施設、低所得者層向け住宅などです。ニューヨークタイムズでは、必要不可欠ではないと判断された現場の工事会社が次々に抗議を続けている、と報道されています。

(主な出典は下記)

日本の建設業の動向

日本全国で、ほとんどの建設現場は稼働を続けています。準大手ゼネコンの西松建設が、緊急事態宣言の翌4月8日に、対象地域の7都府県における工事の停止を基本方針とすることを発表しましたが、現時点で主要ゼネコンは追随していません。

※【4月13日16:18追記】4月13日、清水建設は、緊急事態宣言の期限である5月6日まで、7都府県の全現場を閉所する方針を表明した模様です(現時点で同社HPにはアクセスできません)。

考察①日本はどの国を参考にすべきか?

日本は現時点では、欧米各国と比べると感染者数・死亡者数ともに少ないですが、今後いつ感染爆発が発生してもおかしくない状況にまで来ていることは確かです。

現時点で最も参考にすべきはイギリスかもしれません。政府としては労働安全衛生に関する社会的距離の担保などの勧告を出すにとどまっているものの、建設会社が個別に対応し、建設現場の閉鎖や部分的再開を判断しています。

現時点で法的拘束力のない対応にとどめている日本政府の傾向を踏まえると、イギリスの対応は特に注視する必要があると言えるでしょう。

考察②どこまでが「必要不可欠な工事」か?

また、今後感染者数・死亡者数がいかなる推移をしたとしても、他のあらゆる国と同様に、病院や非営利施設、設備インフラといった「必要不可欠な工事」は継続されることも予測できます。

他国の動向を参考に、どこまでが「必要不可欠」な工事で、どこからが「不要不急」な工事かの議論を、今から開始しておく必要があります。

その上で、将来的に発生する可能性のある「不要不急」な工事の停止に向けては、受発注の関係を超えて議論を開始することが望ましいでしょう。これに加えて、職人の感染リスク、施工会社の財務体力、施主などのステークホルダー間の意見調整など、様々な問題を重層的に考える必要があります。

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既に前例のない事態となっている以上、あらゆる状況を想定して準備を進める必要があります。ConTech総研では今後も、新型コロナウイルス感染症に関する建設業の情報や考察を発信してまいります。

この記事を書いた人:田久保 彰太(ConTech総研)

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新型コロナが変える建設業の今後:直近動向と"コロナ後"の考察(4/2時点)

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コロナ禍でも絶対に止まらない「必要不可欠」な工事とは?諸外国の定義から見えた3つの傾向(4/21時点)

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