新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

臨時号⑨:図解 5分で分かるコロナ禍の工務店・工事会社の売上計画 3つのポイント

コロナ後の売上計画をどう見直す?

前回の【図解】コロナ禍の工務店の資金計画に続き、
「コロナの後、売上計画をどう見直すか?」
という「コロナ支援策を使ってお金を借りた後」の経営者の方の声を踏まえ、「売上計画」のポイントを以下3つで説明します。

図2

なお、分かりやすさを優先し、計算方法等はかなり簡略化していますので、自社の業態、経費構造、取引業界等を加味して詳細については個別で検討をお願いします。

なお、東日本大震災の時の経験をベースにした対策については後半に書いています。

1:リーマン・ショック後、建設投資は1~3割減

2008年のリーマン・ショックと今回のコロナ禍は問題の発生した要因も建設業が置かれている状況も異なります。(既に5/18時点でコロナの影響はリーマン・ショックを超えるという予測もあります)
単純な比較はできないのですが、直近で最も建設業の需要が悪化したのがリーマン・ショックなので、今回リーマン・ショック時の統計を参考に「何もしないと不況でこれくらい売上が減る」を考察しました。

リーマン・ショック時は新築25~30%減、リフォーム15%減

以下の図は国交省の建設工事施工統計調査(※)より、維持・修繕工事(リフォーム、設備修繕等)、新設工事(新築住宅・マンション等)、元請完成工事高において、リーマン・ショックの前年度である2007年度実績からの差異をグラフ化したものです。

リーマン

リーマン・ショックのあった2009年度の落ち込みを見てみます。(赤い枠)
・維持・修繕工事は2007年度比14%減と悪化の幅が全体に比して小さい
・新設工事は同比30%減と全体に比して大きく悪化

新築から落ち、維持・修繕から戻る

さらに、2007年度の水準まで戻ったタイミングを見てみます
・維持・修繕工事がリーマン・ショックから3年後の2011年度
・新設工事は9年後の2018年度

⇒維持・修繕の方が6年先に回復していることが分かります

これを工務店経営に当てはめて考えてみます。

・新設は30%減なので、新築年間10棟の工務店なら7棟に減
・修繕は15%減なので、リフォーム会社で年商2億円なら1.7億円に減
・一旦不況になった翌年等、直ぐに不況前の水準に戻ることは考えにくい
上記はあくまで目安で、内装請負業等で飲食、宿泊業が主要顧客の場合はさらに大きな影響を受けると考えられます。

もちろん、「そんなに落ちてないよ」という企業もあると思います。
その場合は、以下のケースが考えられます

・自社の顧客基盤が市場全体より強固である
・オンライン集客が上手くいっている
・自社の展開エリア・市場のコロナ影響が小さい

※建設工事施工統計調査:国土交通省が建設業許可業者(約47万社)の中から約11万社を抽出して毎年行っている統計調査。今回は住宅分野の影響を考えるため「土木工事業」「舗装工事業」等の土木工事業の影響を除いて集計しています。

2:不況で売上が減る中、返済の負担は増す

今回のコロナ支援策の中心は金融機関からの借入です。
当然ながら、不況で売上が減る中、「お金を返すための売上の確保」もしくは「コスト削減」が必要になってきます。

多くの会社で、「コロナ前」と「コロナ後」で売上計画を見直すと、「コロナ後」の会社が借入返済分、多くの売上確保が必要になっていると考えられます。(計算式は後述)

コロナ支援策の一つである日本政策金融公庫の借入の据置期間(返済が始まるまでの期間)が2年間なので、借入分を考慮した売上を2年間で目指していくことになります。(お金を貸す側も2年間の猶予を見てくれている

3:コロナ後の売上計画の考え方

コロナ後の売上計画について平均的な規模の工務店の決算(参考:TKC経営指標 木造建築工事業2020年版)をサンプルとして図にしました。

図1

以下のサンプルで考えてみると…

図3

上記の会社の売上が全て新築住宅の場合、以下の計算になります

図4

年間10棟の新築工務店の場合を(やや乱暴に)考えると
①不況で3棟減
②返済のために1棟増が必要
固定費削減等を行わず、前期と同じ利益を維持するなら①+②で4棟分の確保が必要となります。

上記の計算は分かりやすくするためにかなり単純化して前提を置いており、本来は粗利率の悪化、設備投資、借入利息等も考慮しなくてはならないのですが、目安として考えていただければ幸いです。

当然、借入額が増えるほど、「返済のための売上」は増加していきます。
手元資金の確保は企業存続に不可欠なので、バランスが悩ましいところですが、参考にしていただければ幸いです。

考えられる対策 ~ 東日本大震災の経験から

「不況の中で前期以上の売上を確保しなくてはならない」「かつ、対面営業は制限される」中で、考えられる対策として、各社オンラインの活用に取り組んでおられます。

オンライン集客の手法については他に優れた記事があるので、以下の記事を参考にしていただければ幸いです。

この記事を書いている私(高木)は東日本大震災の間接被害を受けた東北の企業の支援に従事していました。
ある会社は工場は無事でしたが、
・電気と材料供給が止まり、生産が一時期停止
・その間の売上がゼロ
と、今のコロナの影響を受けている企業と似た状況でした。その際の経験から集客とは別の観点でお伝えしたいことは2点です。

図5

①「困ってるのは皆同じ」

社会の大きな変化は経営者の心を折ります。
リーマン・ショックや過去の災害では倒産だけでなく「経営者が諦めた」ことによる廃業が増加しました。
今回のコロナ支援策の中心は銀行借入ですが、高齢の経営者には返済期間10年以上の借入は大きな負担です。

「倒産・廃業数÷国交省発表の許可業者数」を計算してみると、リーマンショック前後では年間約5%になります。
これは、許可業者が20社あれば1年で1社倒産・廃業する計算です。
建設業の経営者の平均値が59歳であることを考えると、20社中1社というのは現実的な数字です。

一方、廃業の増加によって仕事を頼む先が無くなり、困る会社(建設業の場合は元請、メーカー等)も出てきます。
「世の中全体で経済を維持していく」観点で、情報収集が欠かせません。

私が関与していた東北の建設関係の企業は、被災・休業した競合に代わり、新たに復興住宅の事業を受注しました。売上に寄与し、取引先(しかも大手)が拡大しただけでなく、「自分たちの仕事が社会の役に立っている」ことを社長・社員も実感できました。

社会が変化する時には意外なチャンスが開けたりするのも事実です。
(もちろん新規受注の際の与信チェックは不可欠ですが…)

また、発注先の中小企業にコロナ支援策の情報をしっかり伝え、コロナ後の工事に支障が出ないようにすることも大切です。

②「社長と社員の温度差」

経営者の方は災害時、必死で会社の資金繰り、受注見通しについて考えていても、案外その緊迫感は社員に伝わっていないものです。これは、経営者の方が社員を心配させまいと元気な姿を見せていることが要因でもあります。

災害等の苦しい時期の増産等、困ったときに社員が協力してくれるかは、普段からの社長と社員のコミュニケーションがポイントになります。
私が関与していた前述の東北の企業では

・普段から朝礼等で最新の顧客の受注動向等を社長から直接社員に伝え
・主要な数字は折れ線グラフで休憩室に大きく貼り出し
・主要な記事は拡大印刷して休憩室に貼り出す

といった地道なことを普段からやっていました。
震災時は、指標としている数字(受注残、見込数等)が大きく変化したことを伝え、「具体的な数字で」現状を説明し、「業界の動向を事例をもって伝え」復興住宅対応のための増産協力を呼びかけました。

「コロナで大変だから」と漠然と説明するのではなく、かといって不安をあおるでもなく、具体的に
「何が起こっていて」
「世の中に何が求められていて」
「何の協力をしてほしいか」
を伝えることが大切と考えます。

この記事は新建ハウジングさんと連携しています

次回以降、より詳細に不況下での差別化戦略について書く予定です。

この記事を書いた人:髙木 健次(ConTech総研)

【過去記事】臨時号:新型コロナウイルス感染症と建設業
新型コロナが変える建設業の今後:直近動向と"コロナ後"の考察(4/2時点)

コロナ禍で日本の建設業が止まる可能性は?欧米各国の動向を基に考察する(4/12時点)

新型コロナが変える建設業の働き方 ~対面と紙とテレワーク(4/14時点)

建設業特化・新型コロナウイルス関連支援策(4/20時点)

コロナ禍でも絶対に止まらない「必要不可欠」な工事とは?諸外国の定義から見えた3つの傾向(4/21時点)

図解 5分で分かるコロナ禍の工務店・工事会社の資金計画・資金繰り

海外事例から見る、 工事再開後の建設現場における感染防止策 (5/7時点)


ありがとうございます!
13
ConTech総研は、「Construct the Connection」をテーマに、民間建築業界のいまとこれからを研究・発信してまいります。 建設系専門紙で連載中 https://chikalab.net/rooms/112

こちらでもピックアップされています

臨時:新型コロナウイルス感染症と建設業
臨時:新型コロナウイルス感染症と建設業
  • 12本

新型コロナウイルス感染症の流行が建設業に与える影響と、中小企業支援策等をまとめます

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。